
今日の授業では、
年代における顔の違いについて考えてみましょう。
デモンストレーションを観て、感じたことを発表してもらいます。
子どもの顔と老人の顔の違いを確認した上で、
老けて見えるセルフメイク実習を行います。
- 濃いブラウンのシャドーやアイライナー
- 薄いブラウンのリキッドアイライナー
- 細い筆(100円ショップのリップブラシなど)
- ハイライトカラー
- シェーディングカラー
実習中に、
中間課題に向けてセフルメイクのチェックをします。

準備してきた写真はclassroomからスライドに入れてね。
- 子どもの顔写真(女性、10歳以下)
- 老人の顔写真(女性、80歳以上)
どんな違いがあるか 、各自書き出してみて!
子どもの顔と老人の顔の違い
顔の成長・発達
成長、発育、発達という用語
「成長」,「発育」それに「発達」は,いずれも「育って成熟する」という意味で利用されることが多いが,厳密にはそれぞれ異なる意味をもつ。
成長は完成を意味する「成」と,長さが伸びるとの意味をもつ「長」からなり,主に全身や身体の各部分の量的増大,とくに長さの増加を意味する.
発育は,量の増加ととも に質的にも複雑化することを意味し,受精卵から形態形成が終わるまでの質・量の変化を指す.
これに対し発達は,発育過程において構造上はより精密に,機能 上はより有能になることを意味するが,主に機能的成熟を示す用語である.
また, 形態と機能両面の成長過程を表す用語として一般に「成長発育」が用いられる.身体の成長
顔は,言うまでもなく身体の構成要素の一部である.
したがって,顔の成長を知るにはまず,出生から成人期にいたる身体全体の正常な成長様相について理解する必要がある.
臓器,器官,組織といった身体の構成要素は,出生後すべてが同じペースで成長するわけではない。
出生後における身体の成長発育様相を端的かつわかりやすく表現したものにスキャモンの臓器発育曲線がある(図1).
図1. スキャモンの臓器発育曲線
リチャード・スキャモン(Richard E. Scammon)は,臓器や器官の成長発育にともなう形態形質の変化のパターンを,一般型,神経系型, リンパ系型,生殖器系型の四つに分類した.
一般型には身長,体重,骨格,筋,胸腹部臓器などが含まれる.
出生後,乳幼児期まで急激に成長し,その後ゆるやかになるが思春期に再び急激な成長を示すのを特徴とし, S字状の曲線を描く.
神経系型には,脳,脊髄,視覚器などの中枢・末梢神経系器官が含まれる.
出生後急速に成長し,4~5歳で成人の80%,6歳では 90%にまで達するなど成長の完了が早い.リンパ系型には,免疫機能を司る扁桃,リンパ腺,胸腺などが含まれる.
これらは出生後急激に成長し、思春期前12~13歳頃には成人レベルを超えて最大となるが、思春期以降は減少して成人の大きさになる.生殖器系型には,男児の睾丸,陰茎,女 児の卵巣,子宮などが含まれる.
学童期前半までは成長がわずかであるが、思春 期になると男性ホルモンおよび女性ホルモンの分泌が活発化し急激な成長を示す.成長発育の影響要因
成長発育に影響する要因には内因性因子と外因性因子とがある.内因性因子には遺伝やホルモンが含まれる.
両親から受け継いだ遺伝形質が成長発育に影響を与え,とくに身長は親子間で相関が高いとされる.
ホルモンは種類が多くその影響は複雑多岐にわたるが,成長発育に影響するホルモンの代表例として成長ホル モンがあげられる.
成長ホルモンの分泌異常が顕著な場合には成長障害が生じる. 著しい分泌低下では下垂体性小人症が,思春期以降の分泌過多では四肢末端や下顎骨が過度に成長する先端巨大症(アクロメガリー)がみられる. 外因性因子には,栄養障害,疾病などのほかに環境要因が含まれる.
実際には,内因性因子と外因性因子とが相互にかつ複雑に影響し合い,身体の成長発育が表現されることになる。
脳頭蓋と顔面頭蓋
頭部は頭蓋と顔からなり,解剖学的に前者は脳頭蓋,後者は顔面頭蓋とよばれ る.
成長発育にともない身体を構成する各部位の比率は変化する(図 2).
身体全体のバランスをみると,乳幼児期においては胴が長い傾向を示すが,下肢は成長発育とともに伸長し成人では身長のおよそ半分となる.
身体に対する頭部についてみると,新生児ではおよそ4頭身であるが,成長とともに頭部の比率は徐々に減少し成人ではおよそ7~8頭身となる.
図2. 成長発育にともなう身体各部の比較
脳頭蓋は前頭骨,頭頂骨,後頭骨,側頭骨で構成される頭蓋冠と頭蓋底から成り立ち,頭蓋底は脳頭蓋と顔面頭蓋の境界部に位置する, 頭蓋冠は,出生後における脳の急速な成長に影響され、早期に著しく増大する.
一方,顔面頭蓋は上方が頭蓋底と接し,中央から下方にかけては,上顎骨とそれに隣接する涙骨,鼻骨 頬骨などの顔面骨からなる鼻上顎複合体や下顎骨から形成され,咀嚼や呼吸の発達と関連し,出生後長期間にわたってゆるやかな成長変化を示す.
すなわち,脳頭蓋はスキャモンの臓器発育曲線における神経系型の成長を,顔面頭蓋は一般型 に類似した成長変化を示す.その結果, 子どもの場合には顔が小さく頭が大きい。
目が大きい,オトガイの形成がわずかであるといった特徴がみられ,成人では頭の占める割合が減少し,鼻が突出して上下方向に長くなり,下顎が角張るといった特徴を示すようになる(図3).
図3. 子どもの顔と成人顔の比較
成人顔のプロポーション
図6は, ルネサンス時代における芸術家の間で調和がとれているとされた正貌, 側貌での垂直的比率を示す.眉間点から鼻の下(鼻下点)までの距離と鼻下点か らオトガイ下点までの距離比率は,調和がとれている場合おおむね1:1になる とされる.また,口元周囲に限ってみた場合には,鼻下点から上下口唇の接触部 分(口裂)までの距離,口裂からオトガイ下点までの距離比率はおよそ1:2が 望ましいとされる.成長終了後における顔の比率は,民族間,個体間で異なり一 義的に決められるものではないが,美容外科,外科的矯正治療など顔立ちを変化 させる医療においてはこういった比率が治療目標設定にあたっての一つの指標と なる。
図 6. 調和のとれた正貌・側貌での垂直的比率
(眉間点と鼻下点との距離):(鼻下点とオトガイ下点との距離) = 1:1
(鼻下点と口裂との距離):(口裂とオトガイ下点との距離) =1:2
[齋藤功]
参考文献
[1] 山本照子(2008) 「成長と発達」相馬邦道他編『歯科矯正学 第5版』医歯薬出版,
顔の加齢変化
概論
顔の型はヒトの一生を通してさまざまに変化していく。すなわち幼児期,学童 期,青年期,成人期,壮年期,から老年期への変化の過程である.一般的に幼児 期での顔はかわいらしく丸型をしている.成人期に入ってくると各人の遺伝的要 素や人種差による要因にもよるが,卵型や逆三角型の顔型へと変化していく.そ して中高年から老年期に入ってくると顔型はふっくらとした四角型の顔か,もし くは,ややほっそりとした細長い顔型へと変化し,見るからに老人らしい顔へと 変化していく.
本項では顔の変化の中でもとくに老人顔に注目して説明を行うが,その前にそ のような顔をつくる大きな要因となる皮膚のシワについて説明する.
皮膚のシワの原因
皮膚の老化の大きな原因としては加齢にともなう生理学的な変化,とくに光の 中でも紫外線による老化およびそれらの要因が重複することで生じる要因などが 考えられている.そこでこれらの原因によって起こる皮膚の変化について簡単に 説明する.
1) 生理的老化
a. 加齢による皮膚の表皮の皮脂分泌や角層の減少により水分保持能力が低下. すなわち皮膚の表面がかさかさする現象が起こる.
b. 皮膚の真皮の部分の膠原線維(コラーゲン線維)と弾力線維が変化, 皮膚の基質成分であるヒアルロン酸の減少により肌の張りや弾力性が減少して しまう。
c. 表皮が薄くなることにより皮膚が縮みやすくなる.
d. メラニン細胞の生産の減少により老人性白斑などが現れる.
以上が生理的変化として考えられる変化である.
2) 光(とくに紫外線)による皮膚老化
紫外線が長時間にわたり皮膚の表皮にあたると,細胞中の DNA が壊され,ま たその後の修復ミスによって突発性変異が現れる. さらにコラーゲン産生能力の 低下,変性化した弾力線維の異常な増加により発がん化が起こることもある.
3) 生理的老化と光老化とが重複した要因
皮膚全体にわたり小ジワを生じたり、加齢にともなった老人性紫斑が出現した りする。
顔に現れるシワ(シワの分類)
際立って目立つ老人顔の特色はシワと皮膚のたるみである.その中でもとくに シワについては解剖学的,また皮膚の機能形態的な点からいろいろな分類がたく れている.これらの分類の中で解剖学的な分類が最もわかりやすいのでこの術 について説明する, 解剖学的に大きく3型に分類されており,
1) シワ系
2)溝系
3)ヒダ系
とされている.
シワ系とは,皮膚全体に認められるシワで,加齢とともに出現してくるものでちりめん(縮緬)ジワや小ジワがこの例に相当する.溝系のシワとしては,解剖学でも名称がつけられている本当の溝のことをいう。すなわち鼻唇溝,上眼瞼溝,下眼瞼溝やオトガイ唇溝などがその例にあたる.最後のヒダ系の例としては,老人に特有に 認められる頭や喉の部位に現れる横ヒダや口角ヒダ,内眼角のヒダなどがあげら れる.そのほかには,皮膚科学などではシワの形状より,線状シワ,図形シワ 縮緬ジワなどと分類され,またそのシワの深さによる分類,すなわち皮膚を伸ば すとシワが消える浅いシワや,シワがまったく消えない深いタイプのシワなどに 分類されている.そのほかに皮膚直下に存在する表情筋の運動によって起こる表 情運動のシワなどもある. その例としては外眼角部に生じる外眼角シワ(俗名を カラスの足跡という),目尻の部位に生じる小さなシワや眉間に生じる縦ジワな どがあげられる.これらの表情筋によって生じるシワは表情筋の走る方向と直角 に現れるシワである。
一般的な加齢にともなう顔の各部位での変化(シワとたるみも含めて)(図1)
a. 額:若年者では皮膚にシワは生じていないが,壮年期から老年期になるに したがって横ジワが目立つようになる.
b. 眉:眉毛が加齢とともに薄くなり,眉尻が下がってくるようになる.
c. 眼:加齢とともに目元はくぼみ,その周辺の皮膚がたるむことで目尻が下 がってくる.
d. 頻:頬部の骨や頬部と口部の境をなす鼻唇溝が加齢とともにより目立つよ うになり,溝も深くなってくるとともに頬部の皮膚が下にたるみ下がってくる。
e. 口の周囲:口角が下がる、口唇の上に縦のシワが目立つ,口元が扁平になる,口元が小さくなる.
f. 顎:顎を覆う皮膚がたるみ出す,二重顎になる.
老化にともなう各年齢層でのシワやたるみの状況
シワやたるみに関しては同一年代においてもある人は非常に若々しく見える一 方,まったく老人顔のような人もいることは日常生活の中でよく経験することで ある。このような現象は各人の生活環境や個人の遺伝的な要素,また人種差なし の原因と考えられる.ここでは一般的に老人顔に変化していく年齢層での変化の 特色を表1にまとめる. 以上,各年代層でのシワの変化を図2に示す.
図 1. 老人の顔貌
額や鼻根部にシワが多く認められ,また眼も落ち込みその周辺の皮膚がたるみ,頬部はこけ,頬骨が目立つようになって老人に特有な顔になってくる.また鼻唇溝もよりはっきりとしてきて深くなり、口唇部は薄くかつ扁平化していき二重顎や喉頭部のシワも目立つようになってくる. (Salasche, S. et al. (1998) Surgical anatomy of the skin, Appleton & Lange, p.54, Fig 6–1)
図2. 中高年から高齢者になるにしたがって顔の中に生じるシワの部位における変化を示した図
年齢層でみた老人顔への変化の特色
30 代より 40代
額に数本の横ジワが少しずつ生じるとともに鼻唇溝の溝が明らかになってくる.ま た頬骨に沿った皮膚線も少しずつ認められるようになる
50代より 60代
額の横ジワが数本よりはっきりと目立つようになる.上眼瞼周辺の皮膚のゆるみ、 縮緬ジワの出現,外限角シワ(カラスの足跡),眉根部の横ジワ、鼻唇溝の深化な どがより目立つようになる
70代以上
額の横ジワ類の増加,眉間の縦ジワ,下眼瞼溝,下眼瞼、溝のたるみ,頓オトガイ 溝が下がる、オトガイ唇溝の明確化,口角より顎にシワが出る上口唇に縦ジワが より多くかつ深くなってきてシワやたるみが戻らなくなってくる
まとめ
本項では,子どもから成人および中高年から老人へと高齢化するにしたがって 顔の形態も少しずつ変化していくこと老化にしたがって顔の外形以外にも顔の 中に多くのシワが形成されていくことを説明した. シワの生じる部位に関して